くすり百話 (第28回) 第42話 佐賀・江戸の名薬A千金丹 |
第42話 佐賀・江戸の名薬A千金丹(せんきんたん) |
千金丹は肥前売薬の主要品目の一つに数えられていた。 千金丹は第二次大戦まで全国的に人気を博した。 |
◆千金丹の伝来◆ ■朝鮮国より対馬本藩へ伝えられたと思われる奇応丸、千金丹、 香蘇散等は田代領へも伝えられ、医者や庄屋層に、そして、一般領民 の間に製薬技術が伝承され、庶民救済の施薬となったといわれる。 ■江戸時代、対馬藩へ朝鮮半島 の情報、技術が伝わったとされる。 県東部の鳥栖市・基山町は江戸時代、対馬藩田代領であったこと から朝鮮半島の薬の情報、技術が対馬本藩を経由してこの 地域へ伝わり肥前田代売薬をなしたとされる。 ■肥前田代売薬の始まりは千金丹の製造販売にあるという説もある。 基山町の喜三衛門は当時寄寓していた対馬, 千金丹本舗の藤助 という者から千金丹の製法を習い元禄12年(1699)売薬の 業を始めたというものである。 |
◆千金丹から奇神丹へ◆ ■佐賀の千金丹は明治末期、奇神丹へと変わっていった。 奇神丹は日清、日露戦争時に軍用薬に指定された。 残念ながら、現在、 千金丹は佐賀県、長崎県では生産されていない。 |
◆ 薬 効 ◆ 千金丹は、食傷、霍乱、溜飲、痰飲、舟車酒酔い、頭痛、 胸痛(気分不快、食あたり、清涼整腸)などに用いられる。 ◆ 成 分 ◆ @鳥栖市橋本健氏蔵の薬剤調合帳(天保11年(1840))では麝香、氷片、 朱砂、雄黄、硼砂、砂石、金箔、牛黄の8成分。 A鳥栖市徳渕市助初将 調合帳(安政3年)阿仙薬、甘草、唐掛、丁子、 甘茶、胡椒、肉桂、木香、縮砂、薄荷の10成分。) |
◆ 全国の千金丹 ◆ @対馬には、千金丹本舗が三つあった。なかには、明治時代 需要に応じきれず、大阪に工場を建てたこともあったという。 ◆対馬の千金丹の起源は、一つの千金丹本舗によると、 往昔、朝鮮国の医哲一異人の手に授けられた名方と いい、朝鮮国伝来の名方と称した。 B千金丹は明治からは、四国の業者が手風琴の鳴りもの入り で売る薬としても有名になった。讃岐の千金丹とも呼ばれた。 ■また、狂言に取り入れられるなど独特な宣伝方法 により全国的に有名になった薬である。現在も香川県 では生産されている。 |
参考文献 @宗田一、日本の名薬、1981 A小林肇、対馬領田代売薬史、1960 B小林肇、対馬領田代売薬発達史、1999 C倉成平次、肥前売薬史 D久保山千里、田代家庭薬発達史、1957 |