くすり百話 (第24回) 第35話 難解の薬効 @霍乱(かくらん) 第36話 難解の薬効 A疳(かん) |
第35話 難解の薬効@霍乱(かくらん) |
◆霍乱(かくらん)◆ 佐賀の名薬「奇応丸」や昭和前半より古い薬には、 霍乱という効能がよく出現する。 ■漢方の古典、傷寒論では、急に激しい吐気,下 痢,発熱、悪寒等をおこす状態を霍乱という。1) ■急に胃腸が狂ったように乱れ、激しく吐き下しする 症状の古い呼び名。夏の暑いときに飲食して激しく 吐瀉すること。今日風に言えば、急性腸炎のような 症状を霍乱と言った。2) ■日射病、暑気あたりによって起こる諸病の総称。3) 語源 霍乱の霍は雨(あめ)と隹(とり)からなる。 隹の元字 は、隹が3個からなり、多くの鳥の意。 したがって、霍は雨にあって多くの鳥が急に飛び 立つ意味を表す。3) 「鬼の霍乱」 鬼でも霍乱には寝込んでしまうというところから 「鬼の霍乱」と称し、日ごろ元気な人が珍しく急に 寝込んだりするたとえ。4) 参考文献 1)大塚敬節、臨床応用傷寒論解説 2)鈴木昶、江戸の医療風俗事典 3)漢和辞典第五版、旺文社 4)スーパーニッポニカ,小学館 |
第36話 難解の薬効 A疳(かん) |
◆ 疳(かん) ◆ ■佐賀の名薬、奇応丸や宇津救命丸は「疳」や 「疳の虫」の薬として知られていた。 ■疳は癇癪の癇とも書く。乳幼児の神経過敏症とい われ、身体が弱く、神経過敏で、ちょっとした刺激 に疲労したり、睡眠が浅くなったり、かぜや下痢を繰 り返す、発熱しやすい症状。1) ■癇癪もちで、夜泣きはするし、食べては消化不良 をおこしやすい子、腹ばかりふくらんで痩せているよ うなタイプを疳性という。多くは栄養失調が原因と考 えられている。3) ■現代医学には疳という考え方はない。漢方には疳 症という概念がある。漢方では、肝臓を含め、神経機 能全般と骨格筋の緊張を維持する作用などを含めた ものを「肝」といい、「肝」の陽気の異常興奮を疳症 という。2) 疳の虫 体の中に何か癇癪を起こす虫でも入ったと思われ たのでこのようにいわれたのであろう。1) 小児疳に「孫太郎虫」 栄養障害がある子供ほど疳が強いことがわかって から、蛋白源が求められ、孫太郎虫、山椒魚、鰻な どが小児疳の妙薬に数えられるようになった。B3) 孫太郎虫の利用はみちのくの凶作、飢饉時の 動物性蛋白源として食用源としての発見から 滋養強壮剤さらには、小児疳の薬に転化した のではないかと推測説もある。4) 孫太郎虫は昆虫ヘビトンボの幼虫。日本固有の 民間薬。古くから宮城県刈田郡斉川村生産が有名。 乾燥孫太郎虫1g中、総窒素量は105.62mg, 総アミノ酸窒素量は75.53mgで、必須アミノ酸に冨む。 また、多くの脂肪、ステリン体が含まれ、パントテン酸 の非常に多いことが知られている。B5) 文献 1)夜泣き、癇の虫の解釈と治療、日本医事新報 no.3672平成6.9.10) 2)(甲賀正聰、ドクターサロン39巻10月号1995.9) 3)[江戸の医療風俗事典] 4)宗田一、日本の名薬 5)難波恒雄、和漢薬百科図鑑 |