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くすり百話 (第25回)
第37話 難解の薬効 B疝気(せんき)
第38話 難解の薬効 C 癪(しゃく)
第37話 
難解の薬効B疝気(せんき)

加賀の秘薬・紫雪や佐賀の古薬・疝気一服湯ほかに
疝気という薬効がよく出現する。

=== 疝 気 ===
体の冷えによって、腹部全体、あるいは下腹部の
激痛およびひきつり痛むこと。疝気、疝痛ともいう。

医学の発達していなかった江戸時代などでは、
発作的に起こる腹部の激痛を一括して疝気と呼んだ。

現代風にいえば、胃・十二指腸潰瘍、胃痙攣などが
多かったと思われる。また、睾丸炎、陰嚢水腫、
尿路結石まで含めた下腹部の痛みで、
男性の発症が多かったという。

疝気の字源 と ことわざ
疝気の疝はセンという音声のための形成文字。山に
やまいだれは特別な意味は持たない。疝は病と同意義。
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「他人の疝気を頭痛に病む」
または、
「人の疝気を頭痛に病む」
他人の疝気を心配して悩み、頭痛になる。自分に関係の
ないことに無用の心配をすることのたとえ。C4)

文献
1)図説東洋医学
2)渡辺富美雄他編、日本語話題辞典
3)鈴木昶、江戸の医療風俗事典
4)故事ことわざ辞典、小学館
5)久保山千里、家庭薬発展史

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第38話 
難解の薬効C 癪(しゃく)
富山の名薬で知られる反魂丹や感応丸などの
薬効にあげられている。
===< 癪(しゃく) >===
 胸や腹部が急に激げしく痛むことで、広い症状を
示した。今日いう疝痛の俗称。佐賀の古薬には「疝癪」
という薬効も見られる。
 癪は圧倒的に女性に多く、神経症やヒステリー
に該当する説く医師も多い。
 今日でいう胆石症や胃・十二指腸潰瘍で壁に穴があい
たもの、狭心症の発作、子宮外妊娠による痛み
なども含まれていたようである。
昔は、胆石のことを癪(しゃく)と呼んでいた。

 神経症を裏付けるものに、江戸の医療風俗事典で
は、「奥様のお癪 妾の吐逆なり」という句。
妾腹に妊娠の徴候があると知っては正妻の危機。
妾のつわりを知ったとたんに、腹がきりきりと痛み出した。
これが妾の立場だと「切れるという字ただ見ても癪」と
なるのであろう。興奮によって痙攣を起こした例で、
ヒステリー発作であることを示している。D1)

語 源
 癪は、やまいだれのやまいと積もるで、
不快がつもって起こる病気の意。

1)鈴木昶、江戸の医療風俗事典
2)スーパーニッポニカ,小学館
3)きょうの健康97号 1996年
4)漢和辞典、 旺文社    
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