くすり百話 (第21回)H 13.4.10 第31話 佐賀県 最初の化学分析 第32話 日本最初の外国人薬剤師 |
第31話 佐賀県最初の化学分析 |
||
◆佐賀県において最初に化学分析が 行われたのは、いつ、どこで、何を、 どんな身分の誰によって行われたのであろうか |
||
◇ 分析者はオランダ人薬剤師。温泉を分析 ◇ それは、175年前、オランダ人で薬剤師のハインリッヒ・ビュル ガーが嬉野温泉水を化学分析したのが最初である。 ---------------| 1826年、嬉野温泉の源泉水を分析 |------------ 日本研究で知られるドイツ人でオランダ商館医師の シーボルトは1826年(文政9年)江戸参府(オランダ商館長が 通商を許可されていることに対し江戸へ上がり、徳川将軍に お礼を言上し、品物を献上する行事)を行った。 その道中の2月17日、嬉野温泉に立ち寄り、同行の オランダ人技師 ビュルガー(32話に掲載)が 源泉の化学分析を行った。これが佐賀県における 化学分析の最初であり、温泉分析第一号でもある。 -----------------------| 分 析 結 果 |-------------------- その結果は、次のように記載されている。 湧き出る湯の温度は列氏74-75度(約90-91℃)。 石灰水には沈殿はない。酢酸鉛は水を強く乳濁された。 硫酸酸化第一鉄は緑色となり、濃酸は気泡を生じず。 没食子チンキと鉄青酸カリウムは変化を起こさない 。 塩化バリウムは強い白色沈殿をきたし、硝酸銀はそれ を乳濁した。これらのことから、 この水の中には 、 主として硫酸塩と少量の塩酸塩が溶解している。 (シーボルト江戸参府紀行 斉藤 信訳文通り記載) |
くすり百話 (第21回)H 13.4.10 第32話 日本最初の外国人薬剤師と業績 |
第32話 日本最初の外国人薬剤師と業績 |
|
◆日本最初の外国人薬剤師 ◆日本の自然科学研究 |
|
◇日本最初の外国人薬剤師 ビュルガー◇ ビュルガーHeinrich Butger(1806-1858) は薬剤師の資格で シーボルトの助手として、文政8年(1825)、オランダから日本 へ派遣された。日本最初の資格を有する薬剤師であった。 医師シーボルトの下で薬剤師として勤めた。彼が出島 で使ったのは、バタビア局方といわれる。薬剤師として の本文は医療用薬品の製造、管理であったが、日本産 の多くの生薬や岩石・鉱物の収集も行った。その多くが ライデン国立民族学博物館に収められている。 ------------------| 各地の温泉水を分析 |------------------- 長崎周辺の温泉やシーボルトに伴って江戸へ東行の途上 など、本31話に掲載の嬉野、武雄温泉ほか各地の温泉水を 化学分析した。その分析手法は試薬を順次加える方法で 温泉水に含まれる化学物質を特定していく近代的な 化学分析法であった。 ------------------| 日本の自然科学研究 |------------------ 未刊の「日本地質鉱物誌」の草稿はビュルガーの手 によるものであり、シーボルトの自然誌研究の中で 地質学、鉱物学の貢献度が高い。 シーボルトが鳴滝塾での医学教育のなかで、化学的 観点を導入したこと、そして高野長英などが化学に 特に深い興味を示したことは知られているが、 化学的活動はビュルガーによるものが多いとされる。 ビュルガーは、シーボルト帰国後も引き続き、 自然科学研究員として、日本研究を行った。 (文献:ジーボルト江戸参府紀行、斉藤信訳。出島のくすり、長崎大薬学部編) |