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くすり百話  (第9回)H 12.4.13
第15話 くす玉    
第16話 薬祖神
    
第15話
くす玉(薬玉) 


今日、開店祝いや橋の開通式などに用いられる
「くす玉」は「薬玉」
で,もとは薬用香料を使い、邪気を払う長寿の象徴として用い
られたものです。
また、端午の節供に屋外に立てる吹き流しは薬玉の変化した
ものいわれます。


〔薬玉〕麝香、沈香、丁子などの香料を入れた錦の袋三つの玉にし
て、糸で飾りざまな造花で飾り、ショウブやヨモギなどを添えて挿し、
赤、青、黄、白、黒などの五色の糸飾りを長く垂れ下げたもの。

 〔由来〕中国の後漢(25〜220)乃至それ以前から端午に五色の糸を
ひじにかけて、魔除けのまじないにし、これを長命縷(ちょうめいる)、
続命縷(ぞくめいる)などといった風習がわが国へ伝わったもの。

5月5日の端午の節供(節句)に、不浄を払い、邪気を避ける用具
として柱などにかけ、また、肘ひじにかけるなど身につけて長命の
呪いとました。

〔変遷〕平安時代に流行し、貴族間では贈答も行われたが、江戸時
代になると次第に衰え、紙細工化し女児の玩具として流行した。

この紙細工は、技巧を凝らし、手芸品に発展し、茶器の袋などに
応用された。現在では、商店の開店祝い、橋の開通式、船の進水
式や祝典などに用いられる。玉が二つに割れて、中から五色の紙
片などが散るものもある。
   


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第16話
薬祖神
日本:少彦名神(命)
中国: 神    農 

薬祖神:神農
〔日本薬祖神〕
わが国では、少彦名命(すくなひこなのみこと)が人間に医薬と
農業
を教えたとされる。日本書記(720年)によれば、少彦名命は呪
いが上手で医薬の道に秀で、酒の醸造法を改良したともいわれ、
酒を医薬として使ったとされる。

また、大己貴神((おおなむちのかみ)、大国主命(おおくにぬしのみこと)
ともいう)と並称されるが、この場合は農耕や労働は大己貴神の行動と
して語られる。

古事記、日本書記には、この両神は兄弟の契りを結び、協力して国
土を納めることに尽力し、医薬の道を大成されたと記載されている。

大阪の薬の問屋街として知られる道修町には薬神として少彦名神
祀った少彦名神社がある。
一方、東京の薬の町本町では少彦名神と大己貴神の二神を祀る。

大己貴命(大国主命)は、古事記(712年)に鮫に皮を剥がれて傷つ
いた因幡の白兎の皮膚傷を治すことが記されており、
医薬に関係の深い神である。


〔中国の医薬神〕
神農(しんのう)は中国古代の伝説上の帝王で、火徳を有するので、
炎帝ともよばれる。
民に農業、養蚕を教え、さまざまな草を試食して医薬を教えたとされ
る。体は人間であるが、頭に角があり、薬草を口にした人身牛首で、
医薬の神 とされる。


日本では漢方医は冬至の日に神農をまつり、親戚、知人を饗応する
習わしがあった。漢方全盛の江戸時代には日本の医薬神・少彦名神
と中国の医薬神・神農が結びつき、
その神社や祭りを「神農さん」と呼ぶようになった。


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