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くすり百話 (第15回)H 12.10.5
第24話 薬研
第24話 
薬研
やげん
薬  研        薬研堀
 
吉野ヶ里=薬研堀  薬研彫

---------- 【薬研やげん】 ----------
漢方原料の薬種である生薬を砕き、または粉末にするために
用いる器具。細長い舟形をした、内側が V 字形の器の中に薬種
を入れ、上から軸のついた車輪様のものを回転させながら押し砕き
粉末にする。鉄製が一般的であるが、石製、木製のものもある。

----------< 渡来は >---------
中国、唐時代の発明されたもので、中国名は薬碾(やくてん)。
日本への渡来は不明であるが、茶をひく茶碾が伝わっていた
平安時代より遅いのではないかといわれる。

----------< 役立つ薬研 >---------
薬剤師にはお馴染みの漢方調剤道具である。粉砕機械が
普及した今日、博物館行きの観がないでもないが、近代的な
研究所でも活躍している。1g以下のごく少量の植物葉などの
粉砕はケミカル粉砕器と呼ばれるペラ付き粉砕器では遠心力
で宙に舞うだけで役立たない。メノウ擂り鉢でもかんばしくない。
こんな時,一見、原始的に見える薬研が威力を発揮する。

----------■吉野ヶ里は薬研堀■----------
古代の集落を囲み、中世では土豪屋敷を取り囲み、戦国から中世
では城を囲んだ堀のうち長方形に掘られたものは箱掘V字型
に掘られたものを薬研堀、また、片側を垂直で片側が斜面の
ものを片薬研と言われている。
環壕集落で知られる吉野ヶ里の環壕は、薬研の形と
同じV字に掘られたものであり、薬研堀である。

----------< 江戸の薬研堀 >---------
V字形に深く掘った堀っで、東京都中央区東日本橋両国にあった
堀の名。江戸中期に埋め立てられた。不動堂があり、また付近は芸者、
中上流の医師が多く居住した。

----------< 薬研彫 >---------
薬研彫という言葉もある。版画の工房の彫り師達によって浮世絵を大
量に生み出した江戸時代から使い始まった言葉であろうと言われる。

(参考:大辞林,漢和辞典5版・旺文社,日本大百科全書,日本語話題事典)

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