前へ】【次へ
くすり百話 (第14回)H 12.9.5
第23話 日本最初の洋式目薬と逸話
第23話 
日本最初の洋式目薬と逸話
目薬最初の化学成分 蒸留水の調達法 
 
薬瓶第一号のコルク栓 ヘップバーンの伝えた目薬
九州で目薬を生産されている唯一の県は,
300年の製薬の歴史を持つ佐賀県のみ。
これに因んで、日本最初の洋式目薬に
使用されている成分とこの目薬まつわる
話題を探ってみましょう。

-------------------<精リ水>-----------------
   江戸の目薬は、生薬が主でペースト状のもので、
目のふちに塗るか、水に溶いて使うものであった。

日本最初の洋式目薬は、慶応3年(1867)
岸田吟香製造、発売した「精リ水」であ
-------<Hepburn>-------
この目薬は、目をわずらっていた岸田吟香が横浜で
アメリカの宣教師で眼科医のヘップバーン(James Curtis
Hepburn)
に治療してもらった目薬を伝授したものでる。

ヘップバーンはヘボン式ローマ字で余りにも有名であ
るため、一般にはヘボンで通っているが、正しい発音
はヘッバーンあるいはヘップバーンである。
----------<成分ZnSO4>.-------
     「精リ水」硫酸亜鉛Zink sulfateを主成分とするも
ので、水450中に硫酸亜鉛 1を含む。Zinkを中国の当字
にすると精リとなり、精リ水は「シンキ水」と読める。
硫酸亜鉛は現在でも眼科用に収斂作用薬として、結膜
炎、眼瞼炎、角膜潰瘍などに使用されている。
 
-----------<蒸留水>-----------
「精リ水」を製造するには蒸留水が必要であった。
蒸留水製造装置がなかった当時どのようにして蒸留水
を得たか。それは天然蒸留水、即ち、雨を採取した。
方法は雨が降ると一家総出で屋根から竹の樋でかめに
に流し込む騒動であったという。

「精リ水」の使い方は点眼薬の原型ともいわれる。
毛のやわらかい新しい筆か鳥の羽で1日に3度、
目の中へたらしてさした。
----------<最初のコルク栓>---------
目薬で困ったもう一つは、瓶から液が輸送中などに漏
れ出ることであった。店員の奥勝重は居留地の外国人
や船員が洋酒類を飲んだ後に捨てるコルクの古栓を
削って目薬瓶に使ってみると大成功であった。これが

コルク栓を薬瓶の栓に使った最初とされる。
文献:天野宏:薬文化往来,1992

前へ】【次へ