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くすり百話 (第12回)  H 12.7.5
第20話 土 用 と 薬 草 つ み     
第21話 薬草採集と薬草園のはじまり
第20話   
土用と薬草つみ
−ゲンノショウコの土用干し−
   
夏の土用     季節の変わ り目   ◇五行説
5つの土用の慣習 薬草つみ  ◇ゲンノショウコ
 ◆土用 は、彼岸、八十八夜、入梅、二百十日などと共に季節の変わ
り目安
となる日です。                           
土用の期間は、立春、立夏、立秋、立冬の前18日間です。土用は
春、夏、秋、冬の四回ありますが、一般には、7月20日か21日から 
始まる
夏の土用を単に「土用」と言っています。           .

夏の土用 は、古来、寒と対照され、梅雨が明け、1年中で最も暑い
時期です。そのため、種々の行事や習慣が生まれています。    
@土用干し               A丑湯( 薬湯 )     
     B薬草つみ              C土用灸(土用艾)        .
E土用祈祷                            .
D夏負け予防の食養生(土用ウナギ・土用しじみ・土用卵)
丑湯(薬湯), 土用灸(土用艾)は、土用の丑の日に効果が高い
といわれています。                         .

さて、「薬草つみ」については、県内でも、同様なことが
言い伝えられている。                 例えば、
大和町などでは「ゲンノショウコ の土用干し」といい、

ゲンノショウコをはじめ薬草を夏の土用に、1年間の使う分
をつんで乾燥し、保存するよう伝えられてきました。   

この言い伝えは化学的に見ても正しいものです。ゲンノショウコなど
葉を使う落葉性の薬用植物の成分は、一般に、深緑の候といわれる
6月下旬からしばらくの間に含有量が最高
になり、
以降、減少していくことが確かめられています。
経験的に採集適期に近い季節の変わり目の目印「夏の土用」
を「薬草つみ」の時期として伝えて来たのは先人の知恵です。
ゲンノショウコの主成分ゲラニイン含量の季節変化
ゲンノショウコの含有成分の最高時期は花が咲き始めた頃とする
報告があるが、その頃には、既に下葉は落葉を始まっており、成分は、
下降が始まっています。                              
また、健胃薬に使われるヒキオコシ(延命草)の成分について
も夏の土用少し前に成分が最も多いという研究報告があります。

また、夏の土用には、「桃の葉浴」もよく行われた。晴天に日に
タライに水を入れ桃の生葉を入れて数時間放置すると水は熱いほど
になります。生葉を薬缶で炊いた煎じ汁を入れるところもあります。 
このタライに子供を入れ水浴させ、あせもの予防や治療にしました。
これは、太陽熱利用で湯を沸かし、桃の葉の殺菌力を利用した  

先人が伝える省エネ、天然物利用皮膚殺菌法であす。

「土用」とは、中国の思想、万物は木・火・土・金・水の五つの気
(要素)から成り立つという五行説により、この五気が、木は春
は夏
金は秋水は冬に割り当て、残る土を各季節の始まる前18日
に割 り当てられたものです。                       

「土用」とは土気の作用の意味で、この気が働いて四季が始まり
立春や立夏となると説明されています。                 

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第21話 
薬草採集と薬草園のはじまり
 採薬使 薬園師 薬園生 伊吹山薬園 ◇小石川御薬園 九州の薬園   
 
   薬草は、言うまでもなく、薬用に使う植物の総称です。
大和時代に、大陸から医学が伝わると、薬草の知識、利用は大きく変わり、知識
が豊富で薬草の採集方法を教える採薬使が渡来しました。

記録に残るところでは、欽明天皇14年(554)、朝鮮半島の百済国は採薬師の施徳
潘量豊を日本に派遣しました。

推古天皇6年(598)に、皇太子厩戸皇子は「薬草は民を養う要物である。厚く
これを養い蓄ふべしと、天皇然とし、勅して之を掘り貯へしめ給ふ」とあり、早
くから薬草採りが行われていたことが知られている。

飛鳥時代の大宝元年(701)、大宝令では宮内省の典薬寮の職員の中に
  薬園師2人、薬園生6人、薬戸を置く制度が確立しました。

 薬園師は薬草の性質を知り、薬草を植栽、採集し、薬園生を教育しました。
 薬園生は種々の薬を学び、薬戸を使い山や沢から薬草を採り、薬園に植えました。

大宝2年(702)、諸国に疫病が流行し薬園の必要性が知られた。
この頃、平城京の南に薬園があったことが知られています。

奈良時代には、貧しい病人に薬を与え治療した「施薬院」の需用を充たすため、
全国から買い取りまた、寄進させた.

  以下時代をおって、主要なことを記す。
平安時代: 50種以上貢進した国が多数あった。
室町時代: 庭園と薬園とが混合する傾向があった。
安土桃山時代: 織田信長は伊吹山に薬園を開き、外国種も植えた。
江戸時代: 江戸城の南北に薬園開設。南御薬園は小石川御薬園に引き継がれた。

江戸時代の九州の薬園:
長崎奉行川口摂津守が唐船持来の薬草木植栽のため
  長崎十善寺郷に薬園を開設(1680)。
 ・長崎西山御薬園   島原藩薬園     熊本藩薬園(5ケ所)、
 ・
薩摩藩(吉野薬園、山川御薬園、佐多御薬園)、
 黒田藩薬園      ・久留米藩薬園
 


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