くすり百話 (第1回) H 11.1.19 第1話 屠 蘇 の 話 第2話 くすりの日 |
第1話 屠蘇の話 | |||||||||||||||||||
元旦は新しい年の始まりであり、新春の初日でもあります。 この日に最初に口にするのは、お屠蘇です。 ・元旦,又は正月三ケ日に, ・衣装を正し, ・東方を拝み, ・年少者から順に 飲んで1年中の邪気をはらい,病を避け, また長寿延命の願を託して飲む薬酒です. 中国三国時代の名医華佗(カダ)が作ったといわれ, 中国では6世紀以前から元旦に飲む風習があった. 日本では,嵯峨天皇の時代に初めて宮中で屠蘇の行事が行われた. 当時は三角形の袋に入れ,桃あるいは柳の枝につけて,水面から 一尺の高さにつるし,地中から上がる青陽の気を浸みこませ,元旦の 朝,酒に浸した. これを「薬子」(クスコ)と呼ばれる童女が毒味をした後, 天皇に献じたと伝えられる. 江戸時代になると幕府,民間でも屠蘇を飲むようになった. 薬屋の歳末景品に屠蘇散を配るのは,江戸時代に医者が 薬代のつりに渡した名残であす. 年少者から飲む風習は,礼記という書に「君の薬を飲むは 臣先ずなむ.親の薬を飲むは子先ずなむ」とあるように, 中国の長幼の順に従ったものです. 屠蘇は屠蘇散という処方を冷酒に浸したもので,屠蘇散には昔は 有毒で知られるトリカブトの根(烏頭ウズ)も配合されていましたが、 最近では、 朮(オケラの根),山椒(サンショウの果実), 桂皮(ニッケイ類の樹皮), 浜防風(ハマボウフウの根), 桔梗根(キキョウの根),丁子(チョウジの蕾)などが配合 されており,これらはいずれも健胃駆風などの作用をもった生薬です. また、気剤であり、もともと肺、特に、呼吸器系に作用する薬で、冬になる と老人は肺に負担がかかる。その予防のための薬という考え方もあります。 今日の使用法は、大晦日に、白糖またはミリンを加えた清酒1合(180ml) に屠蘇一袋を浸し、元旦に、雑煮を祝う前に、さきにお話しましたように 年少者から順に、一年の健康と幸福を祈念して飲みます。
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第2話 くすりの日 |
今日,10月17〜21日,全国一斉に「薬と健康の週間」が実施されていることは よくご存じですが,「クスリの日」があることをご存じですか!. 元旦の屠蘇をはじめ,くすりにまつわる行事は中国から伝わったものが多い. くすりの日もその一つです. 5月5日に強壮剤の動物生薬鹿茸として知られる鹿の角袋を取るための鹿狩 りをする風習が中国から朝鮮半島を経由してわが国へ伝わった.この狩りは 「くすり狩り」と呼ばれた.661年推古天皇が大和の国で行われたのが日本最 初であった.やがて,この日は「くすりの日」と定められ,宮廷の大切な行事 となったものであります. 鹿が登場したのにはそれなりの理由があります.古代中国では,鹿は何千年 も生きるとか,一頭の雄鹿が何百頭の雌鹿を従えると信じられ,鹿の角や肉が 不老長寿や強精薬として用いられていた. 日本でも昔は寒い季節にしかの肉を食べることを「くすり食い」といった. 鹿の歯や骨など体の様々な部分が薬用とされたが,特に鹿茸,即ち,鹿の若い 角の袋は今でも強壮,強精薬として珍重さえている. しかし,「くすり狩り」はその後,生き物を殺すことを禁じる仏教の影響で 薬草を採取する事のみをいうようになりました.「しし食ったむくい」とは鹿 を指している.また,兎のことを一羽二羽と数えるのは,四つ足を食べるので はないとした庶民の知恵でありました. 庶民ではこのクスリの日とは別に,庶民に実利的なクスリの日があります. 夏の土用の行事一つに「薬草つみ」があります.佐賀県大和町では土用の行事 に「ゲンノショウコの土用干し」と称するものがあります. いわゆる「薬草がり」です.これは夏の土用にゲンノショウコとって乾燥して蓄 える風習です. 夏の土用の前後には草の葉に含まれる成分の量は最高になるものが多いの で当を得ています. |