薬草百選リスト | |
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(59) アカメガシワ(トウダイグサ科) 山のパイオニア 種子は百年眠る |
林が伐採されたり、山地が崩壊して緑が剥ぎ取られると、 ヌルデなどと共に真っ先に出芽して緑を作る緑のパイオニアの樹木です。 後からシイ、カシなどの常緑樹が生長して高くなると、陽 樹のアカメガシワは枯れていく運命にあります。 出芽の早さの謎は、生命力の強い植物で、種子の寿命は 100年にも及び、樹下に落下した種子は、発芽条件が整うまで、 即ち、陽光を受け、地温が上がるまで、長い年月、土の中で 待ち続けています。 北海道を除く日本、朝鮮半島、中国の日当たりのよいところに 生える。 アカメガシワの名は、新芽が赤く、昔、カシワと同様に、葉に 飯を盛ったことに由来。五菜葉、菜盛葉ともいった。 薬用は、樹皮を夏に採取し、日干して、健胃、整腸、炎症、鎮 痛に使う。錠剤などの製薬原料にはエキスが使われる。 |
(60) カ リ ン(バ ラ 科) カリン酒が人気 花は意外に綺麗 |
薄赤色の花をこぼれんばかりに付けたカリンは、枝の太い刺も 忘れて褒めてやりたい。 果実も人気。百貨店などでも比較的高価で売られている。用途 はカリン薬用酒である。果実には渋みの強いものから少ないも のまであるので薬用酒には、渋みの少ないものを選ぶのが 賢い。 中国原産。日本への渡来年は明らかでないが、平安時代には見 られたとされる。薬用樹として、寺院に大きな木が見られるほか、 庭木として植栽される。 カリンの名前は、木目が中国の花櫚に似ていることに由来。 薬用には、果実を使う。秋に採取して、咳止めに煎じて飲む。 民間では、焼酎漬けにして、咳止めに飲む。 カリンの材は堅く、粘り強く、美しいので、家具、床柱、彫刻 に用いられる。 |
(61) キランソウ(シソ科) イシャイラズの名でも知られる |
近年では、センブリにも優る薬草としての人気ぶり。イシャイ ラズ の方言名がある薬草は5種類以上あるが、 キランソウを指 していることが多い。 キランソウには、シゴクノカマノフタ(地獄の釜の蓋)という変 わった名がある。由来は茎葉が四方に伸びて、ナベにフタをし たように見えることによる。 本州以南の日本、朝鮮半島、中国の路傍や山麓などに分布。 キランソウの名は、中国名の金蒼小草が転じたものといわれる。 薬用には、開花時の春に、全草を採取して陰干しにして、咳止 め、健胃薬などに煎じて服用する。 中国では、腹痛、血の道、腎臓結石など用いる。民間では、多くの 効能があげられているが、医薬学的には不明なものが多い。 |
(62) サ ク ラ(バ ラ 科) 日本の春を代表する花 |
春の花の代表として、また、日本を代表する花として知られる。 サクラはバラ科サクラ属を総称した呼び名。ヒマラヤ東部から 中国、朝鮮半島、日本に分布するが、日本には特に多い。 野生種は12種、自然交配の雑種約20種、 園芸品種に至っては300品種があるといわれる。 佐賀県の野生種は、ヤマザクラのみ、園芸品種はソメイヨシノ、 関山、白妙、枝垂れ桜、御衣香など20数種が見られる。 サクラの名前は、木花之開耶姫(コノハナノサクヤヒメ)の サの転訛説や「咲く」に群がるの略の「ラ」が結びついたとす る説がある。 薬用には、ヤマザクラ、オオシマザクラ、ソメイヨシノの樹皮 を鎮咳、去痰薬、湿疹に用いる。 古来、ヤマザクラの樹皮は食中毒、果皮は胃腸カタルに用いら れてきた。 |
(63) ミツガシワ(ミツガシワ科) 氷河期の残存植物として知られる |
北半球の寒地の水湿地に広く分布する多年草。 1万年以前、寒冷であった氷河期に大陸から南下して、九州にも 広く分布していたが、その後の温暖化で減少し、今日では、佐賀県の樫原湿原 など数カ所に残るだけとなっている。絶滅が危惧される薬用植物です。 種子の化石は西シベリアで三千 万年前のものが発見されている。 ミツガシワの名前は、柏のような葉が3枚ついていることに由来する。 薬用は葉を夏に採集して、天日乾燥後、苦味健胃薬、鎮静、催眠に使用 する。「睡菜葉」の名があるのは、催眠作用の効果によるもの。 北ヨーロッパの国では、薬の規格書である薬局方に記載されている。 |
(64) サンショウ(ミカン科) ピリット辛い薬味で知られる |
かっては、庭に植えられ、葉は寿司などの香気つけに、 若い果実は佃煮に、 幹は「すりこぎ」に利用されたきたが、今日では、こんな利用も 減少している。 日本、朝鮮半島南部の山野に普通に見られる落葉性の低木。 花は4〜5月に小形の緑黄色花を多数つける。 薬用は、果実の皮を秋に採取して健胃薬、鎮痛薬に用いる。 苦味チンキ、漢方の当帰湯などの原料にも使われる。 防腐剤としても、糠味噌に使われる。 辛味成分には駆虫、局所刺激の作用もある。 |