薬草百選リスト
75.イ チ ョ ウ
76. イノコズチ
77. ク     コ
78.ク    ズ
79. ミシマサイコ
80.  メ ハ ジ キ

薬 草 百 選(秋2篇)
(75)
イチョウ(イチョウ科)
生きていた化石植物 
近年、薬用として注目




2億年前に日本をはじめ広く各地に繁茂したことが化石から
判明しているが、世界各地のものは絶滅し、ごく僅か
中国浙江省に自生が残存する。

各地の神社などに1000年を超すようなイチョウの巨木が
見られるが、日本のイチョウは、古い時代に
中国から渡来したものである。

イチョウは食用、細工、民間薬など種々に利用されて
きたが、近年、ドイツ、フランスで痴呆症などの改善に
用いられ話題となっている。

名前は漢名の鴨脚「ヤーチャオ」が転訛したもので、
葉形が鴨の脚ににていることに由来する説、
葉形が「一葉」からきたと いう説がある。

薬用:種子は咳止め、葉の煎じ液はしもやけにつける。
ドイツ、フランスでは葉エキスを医薬品として用いている。
毛細血管の血流をよくし、血液循環を改善するとして、
痴呆症などに用いられたことにより、世界各地で
健康食品として用いられるようになっている。

葉の主成分は、フラボノイドやギンゴライドで過酸化脂質の
蓄積減少、フリーラジカル形成の抑制等の作用がある。

有毒:イチョウの実は外の柔らかい種皮と内部の
堅い殻の種子でできているが、
@種皮は触れると皮膚炎を起こすことが多い。
これはビロボールという成分の作用。
A人が食べる種子(銀杏)を沢山食べて、けいれんを
起こし、意識を消失して中毒死した例がある。
中毒はメトキシピリドキシン(MPN)という成分に原因する
 


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(76)
イノコズチ(ヒナタイノコズチ) ヒユ科
道端の薬草
方言が面白い:ひっつき虫,キガイ、ゼンモン。
  
(右:ズボンに付いたイノコズチ、ササクサ、ヌスビトハギの実)

道端のどこにもある雑草ともいわれる草。 佐賀の方言名が面白い。
秋になるとズボンなど被服に果実がいっぱいにくっつき困らせる。
そんなことから、ヒッツキムシ、チュウジョウグサ、ヤコツキ、
ゼンモン、ヌスット、キチギャーなど佐賀の方言がある。

名前は茎の節の膨らんだところをイノシシの膝に見立てたもの。

薬用は根を使う。11月頃採取して乾燥。利尿、月経不順、
強壮に使う。漢方では牛膝散などに配合される。

イノコズチは植物から、昆虫の脱皮をコントロールする
昆虫変態ホルモンが発見されたことでも知られる。



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(77)
ク コ(ナス 科)
薬草ブームの旗頭


昭和30年代クコの一大ブームが起きた。1本千円で売られた。
特別なものと思って買った人が、家そばの川べりを見ると
たくさん生えていたという笑い話も聞かれた。

その後は、薬草ブームはアロエ、アマチャヅルなどへと
移り変わった。
日本、中国、台湾、朝鮮半島の陽が当たる路傍や原野の
人里近くに見られる。

和名は、漢名の枸杞(クコ)による。クコの刺はカラタチ(枸)
に、枝はカワヤナギ(杞)に似ていることに由来する。

薬用には、根の皮、実を使う。根皮、果実とも秋に採取。
根皮は強壮、炎症抑え、解熱に、果実は強壮薬として煎じて飲む。
中国には強壮、強精の効果ありとして「家を去ること三千里、
羅摩(ガガイモ)、枸杞を食うことなかれ」との諺がある。




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(78)
ク ズ(マメ科)
秋の七草の一つ
屑にあらず有用性高い路傍草


秋の七草として知られるほか、古くから、食用の葛粉、
薬用の葛根、繊維の葛布として知られ、
重要な植物であった。

葛粉(澱粉)は、かっては、病人に滋養強壮の目的で
「くず湯」として用いられたが、今日では高級菓子に使われる
高価なものとなっている。吉野葛(奈良県)、
宝達葛(石川県)、秋月葛(福岡県)が有名。
また、漢方の葛根湯に配合されていることでも知られる。

クズの世界的な活用も注目されている。
クズの繁殖力が強いことを利用して、
世界の砂漠緑化に貢献している。

名前の由来:昔、奈良県の
国栖というところの人が
葛粉を売りに来たため、クズというようになった。

佐賀県では、カイバカズラ、カンネカズラなどとも呼ぶ。
葉は馬の好物で、餌として与えたことにより、
カンネカズラは唐津の知恵者「カンネ」さんに因んだもの。

薬用は根を発汗、解熱に煎じて服用するが、
漢方のかぜ薬等でよく知られている葛根湯などに
配合して使われる。
また、肩こり、消化管運動促進作用も知られている。


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(79)
ミシマサイコ(セリ科)
効能を誇る日本の薬草
絶滅危惧の薬草


漢方で重要な薬草。北海道、琉球を除く日本と
朝鮮半島の一部の原野に分布する。

日本では、かって、漢方に使われる薬草の調達に苦労し、中国産
類似品、同効品を探すことに力を注がれた。 その中で、本種は優れ
もので中国産の1/2量で同じ効果が得られる と言われている。
しかし、このミシマサイコも自生は急速に減少しつつあり、
絶滅が危惧されている。
県内の記録産地での発見は困難なほどになっている。

名前のミシマは静岡県三島から出荷されていたことに由来し、
サイコは中国の近似種の「柴胡(サイコ)」による。

薬用は根を解熱、炎症を除くのに使われる。漢方では、小柴胡湯、
大柴胡湯、柴胡桂枝湯など多くの処方に配合されている。


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(80)
メハジキ(シソ科)
母のためになる薬草 


日本、中国、台湾、朝鮮半島に分布する。県内では唐津、
東松浦、伊万里地方など西部地区の日当たりのよい路傍などで
よく見かける。北アメリカでは帰化植物として見られる。

名前は、「目弾き」の意味で、茎を短く切り、瞼にはさみ、
瞼を閉じる勢いで遠くへ飛ばす子供の遊びから来ている。

全草を乾燥したものを「益母草(ヤクモソウ)」という。
母のためになる薬草という意味で、産前産後の諸病を治し、
子宝の薬草として利用されてきたことを物語る。 

薬用:全草は花期の夏に採取し、種子は熟した秋に採取し、
月経不順、めまい、腹痛、産後の止血などに用いる。
また、漢方薬にも配合される。


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